福岡高等裁判所 昭和27年(う)2091号 判決
なるほど 記録を調べると、原審第一回公判調書(手続)(記録第七丁)と第一回公判調書(供述)(記録第九丁)との間に証拠の標目、及び立証趣旨、同意不同意の別意見又は異議の申立、結果、取調の順序などを記載した所論の証拠関係カード(記録八丁にあたる部分)が編綴されていて、同カードと右第一回公判の訴訟手続の順序を記載した調書及び右カードと被告人の供述を記載した調書との間に、それぞれ契印がなくしかもそのカードに同カード作成者の署名押印のないことはまことに所論のとおりである。
しかし、公判調書に、その作成者たる裁判所書記官の契印を欠いだからといつて、ただそれだけの事由で直ちにその調書を無効とする規定もなく、またそのように解しなければならない実質的理由も存しない。記録に徴しても、所論の証拠関係カードはその文字のインキの色筆蹟などからみて、その前後の公判手続と被告人の供述を記載した各公判調書の作成者たる裁判所書記官西本正吉により真正に作成されたものであり、しかもその形式内容からみて、右公判手続を記載した調書中の「証拠調検察官、別紙の通り」とあるその「別紙」に該当し同公判調書と正当に連絡のあることが容易に推認されるし、もともと右証拠関係カードは公判の審理手続を記載した公判調書と一体をなすべき性質のものであるから同公判調書に、その作成者として、裁判所書記官西本正吉の署名押印が存する以上所論の証拠関係カードと、公判所調書との間に、裁判書記官の押印がなく又、同カードに裁判所書記官の署名押印がないからといつて、同公判調書を無効とすべき理由は存しない。